歌舞伎町の元ホストがコロナで失業して困窮
参考サイト:https://www.news24.jp/articles/2021/03/18/07841510.html#cxrecs_s
新型コロナウイルスは2021年になっても、未だ収束せず……。コロナが経済に与えた影響は、甚大なものがあるでしょう。
今回は、歌舞伎町でホストをしていた男性が、現在炊き出しに通うほど困窮しているニュースについてお届けします。
元ホスト「光熱費1円でも」公園で懸垂……コロナ失業で炊き出しと職探し 厳しさ増す雇用(日本テレビ系(NNN))#Yahooニュースhttps://t.co/YMdilNTHoF
こういった方々の為にも
1人当たり200万くらいは配って
ほしいし、何よりも早く
今の茶番劇を終わらせて
いただきたいです!— RYO (@RYOTARO1981) March 18, 2021
元ホストで37歳のSさんが語る困窮生活
2021年3月現在37歳の男性であるSさん。彼はもともと、歌舞伎町に勤務するホストでした。Sさんの働いていたホストクラブは、2020年コロナ禍で緊急事態宣言によって休業を余儀なくされることに……。
ホストは働いて収益を出した分しか、給料に反映されません。
コロナによる自粛期間でも、キャストやスタッフにある程度の給与を保証していたホストクラブもありました。しかしそれができるのは、潤沢な資金のある大手グループのみかもしれません。
自身が働いていたホストクラブの前を通り、「懐かしい!」という声を上げたSさん。歌舞伎町は他の繁華街よりも栄枯盛衰が激しく、街並みが移り変わる速度もかなりスピーディー。
彼が働いていたお店が取り壊され、他のお店に変わってしまったら、その場所にホストクラブがあったことなんてみんな忘れてしまうでしょう。
「貯金が10万円を切ってしまった……」と語るSさん
ホストといえば、刹那主義、快楽主義の人が多いため、かなり稼いでいるのに派手な暮らしをし続けた結果、立ち行かなくなり破滅してしまったり、廃人になるケースも少なくありません。
幸いSさんは少しとはいえ、貯蓄をしていたようで、今はそれを切り崩しながら生活を送っています。
「20万円ほどあった貯金が、ついに10万円を切ってしまった」と語るSさん。今は炊き出しに並びながら、自治体からの給付金を家賃に当てて、なんとか暮らしているのだとか。
かなり切り詰めていても光熱費や携帯電話の料金で、月々1万円の出費があるのだとか。
冬は暖房器具がないと、凍えてしまいかねない寒いときもあります。
楽天的なSさんは、懸垂で体を温めて体熱を自らアップさせることで、暖房せずに済んでいるそうです。
筋トレをすれば、体を温めるだけではなく、筋肉が増えて健康維持にもつながるため一石二鳥。
己が働いていたホストクラブの解体されている現場を目の当たりにした際の反応も含めてですが、Sさんはどんな状況の中でも、楽しみを見つけるスタンスがあるため、悲壮感が漂っていません。
コロナによって大変な暮らしを強いられる人も少なくないはず。しかし、塞ぎこんでいるばかりでは何も変わりません。
Sさんのように日々の中で、工夫しながらたくましく生きる術を持つ人は、きっとまた浮上できるのではないでしょうか?
ホスト万葉集がつなぐ昼の街と夜の街
新型コロナウイルスは、我々の生活から様々なもの奪いました。
しかしコロナ禍だからこそ、誕生するものもあります。特に文化というのは、人が逆境に立たされるなど、大変な状況でこそ生まれる側面があるもの。
名作と誉れ高いオーソン・ウェルズの『第三の男』という映画の中で「スイスの500年の平和は何を生んだか? 鳩時計だけだ」という意味深なセリフがあります。
今回はデイリースポーツの今井佳奈記者の記事をもとに、コロナ禍だからこそ生み出された『ホスト万葉集』の話題を、これまでよりもさらに掘り下げてお伝えします!
ホストには絶対に教養が必要だという話をしました。
デイリーの記者さん丁寧ないい方でした!「ホスト万葉集」分断した“夜の街”と“昼の街”を教養でつなぐ…俵万智氏らも歌会に | 2021/3/13 – デイリースポーツ芸能 https://t.co/IRdISNom4t
— 手塚マキ (@smappatekka) March 13, 2021
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「ホストよ教養を身につけて!」は手塚マキの切なる願い
『ホスト万葉集』を手掛けた手塚マキさんは、Smappa!Groupを率いるリーダー。ホストクラブの経営だけでなく、書店や福祉など幅広い事業展開をしています。
手塚さんほど、「世間がホストをどう見ているのか?」にフォーカスしているホスト関係者はいないかもしれません。
手塚さん自身もトップホストだったこともありますし、若手ホストをたくさん教育してきた経験があります。
著書の中でも触れていますが、「多くのホストには、根強い自己否定感がある」という見方をしている手塚さん。
小池都知事の政策や日々発せられる言葉の影響で、コロナ禍の歌舞伎町が日本中からフルボッコ状態になったのは記憶に新しいところでしょう。
ホストの仕事がどうしても搾取を含んでいるため、快く思われづらいのは、しかたがないかもしれません。
だからこそ、手塚さんは思いついたアイデアをどんどん実行に移して、既存のホストに対するイメージを変えようとしているのです。
今は営業をしていないものの、かつて歌舞伎町にあった唯一の書店『歌舞伎町ブックセンター』もその一環。そして2020年に話題を集めた『ホスト万葉集』も、やはり手塚さんの「ホストに教養をつけてほしい!」という願いが込められた企画だったのです。
教養がつくことで、ホストの自己肯定感が上がり「世間から認められた」という実感がわくはず。そうなれば、どんどん社会性も、ついていくでしょう。
元ホストの手塚マキが店主が聾者の居酒屋ふさおを来訪、清水正樹が語るホストクラブのコンサル【2021年2月のホストニュース】
歌舞伎町のみにとどまらず、出たり入ったりできる人になるのが理想
新宿歌舞伎町は、特殊な価値観を持つ街といえるかもしれません。
歌舞伎町には暗黙の了解があるといいます。例えば知り合って間もない人に「何の仕事をしているんですか?」と、安易に尋ねないというのも歌舞伎町のルール。
なぜなら、後ろ暗い過去があったり、何らかの傷を抱えて歌舞伎町に足を運んだ人間がたくさんいるからです。流れ着くように歌舞伎町へ来た人もいるでしょう。
他では排斥された人が、歌舞伎町に居心地の良さを覚えて、生活拠点にすることも少なくありません。
優しさを含む歌舞伎町だからこそ、歌舞伎町になじみすぎる危険性をもしかしたら手塚さんは感じているのかもしれないですね。
手塚さんは、歌舞伎町という変わった空間にしかとどまれない人間にはなってほしくないと思っています。「一般社会と出たり入ったりできるような人間になってほしい」というのが手塚さんの願い。
ホストは、銀行から融資を受けづらかったり、住居を貸してもらえないなど、多くの制約を受けるのも事実。
そこで開き直って「自分は、はみ出しものだからしかたない」と諦めてしまうことを是としないのが手塚さん。
のけ者にされるからと諦観するのではなく、教養を身につけることで社会と融合できる部分を見つけてほしいというのです。
コロナ禍の中でもZoomを使った歌会が続けられた
新型コロナウイルスが猛威を振るう前であれば、みんなで顔を合わせてできた歌会ですが、定例会が難しいご時世になっていることは間違いないでしょう。
コロナ禍で注目を集めたものといえばZoom。手塚さんたちも、2020年の7月から11月はZoomで歌会を行っていたそうです。
2020年12月に発売された『ホスト万葉集 巻の二 コロナかも だから会わない好きだから コロナ時代の愛なんて クソ』の中から、印象深いものを2つ紹介しましょう。
ホスト万葉集 巻の二
ホスト万葉集の第二弾が
12月16日に発売されます。うちの子達のも載ってるかなぁ〜☻https://t.co/s5zT5pYbMY…#ホスト万葉集#歌会#五七五七七 pic.twitter.com/G0Nv5JARA5
— VANPS(ばんぷ)佑哉 (@Yuya_K_) December 14, 2020
まずは流石翼さんが詠んだ「ギラギラと偏見の視線浴びながらおれはほすとでキラキラするよ」という歌。
ギラギラとキラキラをかけており、韻の踏み方にまず目が行きそうですね。「偏見の視線」というのは、やはり歌舞伎町の内側にいる人達が、非歌舞伎町民から見られている構図になっています。「おれはほすと」という表現に、キャストとして生きる強い矜持が含まれていますね。
続いて三継大貴さんの「マスク盛れ活かさぬ手はないイロ掛けて君は手の上コロコロコロナ」という歌について。
「色を掛ける」というのは、ホストの常套接客手段、色恋営業のことを指しています。恋愛感情がなくても「君のことが好きだよ」とイケメンに微笑まられば、ドキッとしない女性はいないでしょう。
手の上でコロコロと転がされる人間と、コロナウイルスを上手く取り合わせた時事性にも妙味を感じますね。
強制参加から自主参加への変貌
多くのホストは勉学を好みません。地頭が良くても、学校の勉強が好きで仕方なかったという人間はかなり少数というのが現実。
手塚さんや信長さん、藤本シゲユキさんなど、インテリジェンスを売りにしている元ホストもいますが、やはり全体的にみれば、そういった人達はごく一部といわざるをえません。
手塚さんは、当初「多少の強制力が働いてもしかたない」という感じで、ホストを歌会に召集していました。
しかし俵万智さんなど一流の歌人が参加し、世間的にも『ホスト万葉集』が取りざたされるようになったこともあり、積極的に自ら楽しみながら参加を志願するホストが増えてきました。
嘘の夢 嘘の関係 嘘の酒 こんな源氏名 サヨナライツカ(手塚マキ)
――『ホスト万葉集』#アシタノカレッジ「ホスト万葉集」選者・俵万智さんインタビュー 愛や恋が渦巻く2020年の「サラダ記念日」|好書好日 https://t.co/ndRIw2rooK
— もりかわゆうき (@Yu_Mori) November 5, 2020
今では10人から15人のホストが休まずに歌会へやって来るようです。
短歌や俳句の中には、その時々の自制をふんだんに盛り込んだものや、それとなく風刺したものが一定数含まれます。
人は多くのことを忘れるように設計されています。これは遺伝子に組み込まれているシステムなので、しかたがないのですが、手塚さんは「夜の街が糾弾された事実すらも、やがて風化していくだろう」と予測しています。
ただし夜の街のど真ん中で生活し、歌を詠み続けたホストの存在は、彼らの作った歌を通してずっと語り継がれていくもの。
「歌舞伎町の市井の人間たちの生の声を収録できた『ホスト万葉集巻の二』は歴史を残すという意味の価値がある」と語りました。
今も定期的に歌会が続いているのなら、その三、その四と『ホスト万葉集』は続いていくことでしょう。
ホストの脳内には独特のワードセンスが詰まっており、それが実は短歌を詠む上でかなりの武器になるというのが証明された今、新たな『ホスト万葉集』が世に出るのを心待ちにしている人も多いのではないでしょうか。