手塚マキが歌舞伎町と自身の変化を語った
参考サイト:https://book.asahi.com/article/14200531
2020年、新型コロナウイルスで叩かれまくった新宿歌舞伎町で、最も目立つ動きを見せた男といえば手塚マキさんだったかもしれません。
元トップホストで、現在ホストクラブの経営者を務める手塚さん。
彼には文学、文芸、哲学など異分野にも積極的に関わり、独自性の強いフットワークがあります。
そんな手塚さんが歌舞伎町という唯一無二の繁華街の在り方、自身の価値観の変化について、率直に語りました。
ライターである朴順梨(ぱくすに)さんがWEBサイト『好書好日』に掲載された手塚さんへのインタビュー記事の情報をもとにお伝えしていきます。
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ホストでは異例の高学歴キャリアを持つ手塚マキ
ホストの世界は超実力主義。いくら偏差値の高い大学を卒業していようと、大学入学共通テストで好成績を収めた過去があろうと、姫を喜ばせることができなければ評価されません。
つまり学歴不問で、店を訪れた女性とどのように上手くコミュニケーションをとれて、お店の収益に貢献できるかが問われるのです。
学歴との相関性が低いだけあり、中卒、高卒のホストもたくさんいますし、その中から1,000万円プレイヤーになった人もかなりの数、存在しました。
手塚さんはホスト世界で、かなり高学歴の部類に含まれます。まず高校時代に通っていた埼玉県立川越高等学校は偏差値70。大学は中退していますが、中央大学の理工学部に進みました。
2020年に発売されたノンフィクション作家で小説家の石井光太氏が上梓した『夢幻の街』の中で、手塚さんに関する次のような記述がありました。
「おそらくマキは一流大学に入りながら、歌舞伎町という夜の世界で生きてきたことに少なからぬ劣等感があるのだろう。言い換えれば、表社会への憧憬があるのではないか。だからこそホストたちの人間教育に力を入れたり社会貢献活動をしようとしたりしたのかもしれない。ある意味、彼なりの禊なのだろう」
つまり手塚さんは、歌舞伎町で成功したホストの中で異例のキャリアを持つ変わり種だったのです。
埼玉県内有数の進学校に通っていた手塚さんでしたが、そのまま大学に進んで就職することに違和感を覚えていたといいます。
「不良コンプレックスみたいなのがあった」と語る手塚さんは、社会を裏側から見てみようと思い立ちホストとしてのキャリアをスタートさせます。
軽い気持ちで始めたかもしれないホストライフが、その後、20年以上も続いているとは運命といわざるをえません。
ちなみに手塚さんが「歌舞伎町で生きていく」と受容できるようになれたのは、30代後半の時期だったそうです。
歌舞伎町は人がおかしくならないための街
世間一般の歌舞伎町に対するイメージは、あまり良くないものが多いでしょう。「治安が悪い場所」「犯罪に巻き込まれそうなところ」など、ネガティブな印象を抱いている人も少なくありません。
インタビュアーは、「暴力事件が頻発する歌舞伎町へ行く、おかしくならないか?」というストレートな質問を投げかけました。
手塚さんは「(歌舞伎町は人が)おかしくならないための街」と回答。
歌舞伎町に流れついてきた人の多くが、複雑な生い立ちであったり、人に話せない事情を抱えていたりします。
手塚さんの歌舞伎町に対する認識は、多様性のある街というもの。
他の場所では、枠に押し込められ窮屈さを感じていた人が歌舞伎町へ来て、自由を実感するのもよくある話。歌舞伎町には生きづらさを覚え続けてきた人が、たくさんやってきます。
その中の何割かは、歌舞伎町での呼吸のしやすさを感じて、永住の土地にするのでしょう。もちろん何らかの理由があって、街からひっそりいなくなったり、ドロップアウトする人もいます。
手塚マキが仕掛けた改革「ホストに教養を!」
冒頭で触れたとおり、手塚マキさんといえば文芸に精通しており、これまで教養は必要と考えられてきたホストの世界に新たなアプローチをしたことで話題を集めています。
今はクローズしているものの、歌舞伎町唯一の書店であった『歌舞伎町ブックセンター』を手掛けたり、あるいは俵万智などを招いて短歌を作らせる機会を作った意図はどこにあったのか気になるところ。
ずばりその答えは「教養が身を助ける」と看破した手塚さん。
手塚さんの口癖を2つ紹介しましょう。「フォー・トゥデイ(For today)」と「カルティベイト(Cultivate)」。
「今日のためにすること」という意味を持つ「フォー・トゥデイ(For today)」を意識すれば、一日がより充実したものになることでしょう。
「耕す」という意味の「カルティベイト(Cultivate)」こそが、自分の仕事であると考える手塚さん。
これまで生育環境が決して良くなかったホストの親代わり、兄代わりとなり精一杯向き合って人材育成してきたことも、もちろん「カルティベイト(Cultivate)」の範疇でしょう。
手塚さんが経営している「スマッパ!グループ」には、すでに20年を超えて働き続ける仲間がいるのだとか。
これなんかはまさに「カルティベイト(Cultivate)」の結果といえそうです。
ジョルジュ・バタイユの名を出した手塚マキ
バタイユと聞けば「あの尖った思想を持つフランスの哲学者?」と思う人がいるかもしれないものの、本を読む習慣がない人からすると、それほどなじみがないでしょう。
バタイユの考えを通して「水商売を自分自身の言葉で肯定的な表現にしたい!」と考えた手塚マキさんですが、すんなりとはいきませんでした。
バタイユの思想は難解で、すっと頭に入りづらく感じる人も多いといいます。
バタイユが提唱した有名な考えについて、実例を挙げながら語っていきましょう。バタイユは『呪われた部分』という本の中で「ポトラッチによって、共同体が本来抱える必要がないほどの莫大な富やエネルギー、暴力が消尽(しょうじん)する現象」に触れました。
ポトラッチとは、かつてインディアンと称された先住民族などが行っていたお祭りの儀式の名前。
部族間で贈り物のラリーをし続けて、どんどん相手へのプレゼントの量や質がエスカレートし、お互い疲弊していくことも珍しくないそうです。
富を自ら破壊する様は、かなり暴力的であるものの、それによって共同体が安定するメリットがあるのだとか。
ここまで読み進めても、「どうも理解しづらい」と感じる人が多いかもしれません。バタイユはそれほど難解な哲学者なのです。
ざっくり解釈すると、「一見すれば無意味で価値がない」とされているものに意味があるということなのかもしれません。
哲学そのものが衣食住ほど人から重視されていないため、歌舞伎町の存在意義とどこか重なるところがあるともいえるでしょう。
歌舞伎町を哲学的に解釈しようとして、かなり骨を折った手塚さん。
その結果「無意味であるものや不要不急なものの価値を伝えられるのでは?」という結論にいたり、昨年、幻冬舎から出版した自著のタイトルを『新宿・歌舞伎町 人はなぜ〈夜の街〉を求めるのか』にしたことを明かしました。
ホモソーシャルな世界のホスト業界でフェミニストを育てたい
ホモソーシャルとは、同性同士の強い結びつきや関係性を意味する社会学の用語です。
合コンで男同士が結託して、お互いお持ち帰りに成功した後、同性同士で話すようになった途端に、野卑な顔になり「あの女、ベッドではこんな風によがって、あっやってるところを強引に撮影したんでお前も見る?」みたいに品がなくなるなんて、完全にホモソーシャルな人達に該当します。
ホモソーシャルな男性は、女性を低く見ていたり、「性行為をするために騙してもOK」など、かなり男性中心的な考えの持ち主であることも珍しくありません。
ホストの世界がホモソーシャル的であるというのは、お店のキャスト、スタッフが巧みに連携して女性を特別扱いし承認欲求を満たして、収益につなげる構造があるからなのでしょう。
元ホストで現在経営者の手塚さんも、ホストの世界は確かにホモソーシャルな空間づくりに加担している面があることを認めました。
色濃いホモソーシャル文化があるからといって、ホストクラブを閉じるのではなく、女性が主体的に遊べる場所作りをこれからも継続しながら、「フェミニズムに目覚めるホストを増やしたい」というのが今の手塚さんの願いのようです。
一条ヒカル(辻貴人)が恋愛バラエティー『恋する36時間』に出演
参考サイト:https://jtame.jp/entertainment/49867/
日本テレビがお送りする恋愛バラエティー番組『恋する36時間』。8名の男女が本気の恋をするというのが、こちらの番組の醍醐味。
元カリスマホストで、現在はgroup BJ ONE’S CREATION代表取締役社長などを務める実業家である一条ヒカルさんが、『恋する36時間』に出演したという話題をお届けします。
プライベートでは意外と地味な辻貴人
一条ヒカルの名前で活動している際は、派手なイメージをもたれがちなものの、実はプライベートがかなり地味である辻さん。
一条ヒカルを演じているときが陽だとすれば、辻貴人のときが陰なのかもしれません。
自身のツイッターで「結構僕のシーンはカットされています」とカミングアウトした辻さん。
今回は不本意な結果になったかもしれませんが、また次回『恋する36時間』に出演した際は、今回のことを反省し、また違った動きを見せてくれることでしょう。