『アスカノ』の略称で親しまれる、をのひなおさんの漫画『明日、私は誰かのカノジョ(アスカノ)』が、「リアルで面白い!」と好評を博しています。
とりわけ話題になっているのが、『アスカノ』のホスト編。実在のホストクラブをモデルにするなど、徹底したリアリティーの追求によって、『アスカノ』の愛読者になる人が急増中!
2020年10月下旬時点で、すでにシリーズの累計が40万部を突破。
なぜ『アスカノ』が、これほどまでに多くの人の心を捉えて離さないのか、その魅力を解説します!
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アスカノの魅力①「章ごとにテーマが変化」
アスカノは、章ごとに主人公とテーマが変わっていきます。
- 第一章 「彼女代行」
- 第二章 「パパ活」
- 第三章 「整形」
- 第四章 「ホスト」
をのひなおさんの得意なものは「お金の絡んだドロドロした恋愛」。
第一章の彼女代行に登場する主人公は、顔に火傷跡があり、それを化粧で巧みに隠し、一見すると美女のようにしか映りません。
彼女の美しい外見に惹かれた男性は、当人の内面にある葛藤を想像することができないのです。
とりわけ作家性が色濃く出ているといわれているのがホスト編。
ホストクラブは、男性が女性相手に疑似恋愛的なときめきを提供する場所。虚と実が強烈に絡み合います。
作者のをのさんがハッピーエンドを好まない漫画家のため、読後感の良い作風ではありませんが、どの章も読み応えが抜群。
巻数を重ねるごとに、ファンが増えていくのも納得です!
アスカノの魅力②「コロナ禍の今を克明に描く」
多くの物語をざっくり分けると
- 現実と比べて距離があるもの
- 現実とリンクしているもの
に二分されます。
『明日、私は誰かのカノジョ』は、現実を忠実に描く作風。
ホスト編に登場する、ホスト達の多くはマスクをしています。2020年の春頃、日本全体が自粛を強いられたのは記憶に新しい話。
作中でも新宿にあるBARがコロナでしばらく休業していたり、登場する大学生が「ZOOMの飲み会よりもリアルな飲み会の方がやっぱりいい!」と感想を述べるなど、リアルさが、そこかしこから漂っています。
パパ活をしている女性が「最近は、ヤバい客しかいない」と漏らすのも、新型コロナウイルスによって客層が変化していることを示唆しているのでしょう。
風俗の業界でも、コロナが警戒されている最中にやって来る男性客は、やぶれかぶれの危険な人間が多かったと報道されていました。
不安定な商売の今を『アスカノ』は浮き彫りにしています。
彼女代行サービスも、ホストクラブも今の日本にあるお仕事。その形が新型コロナウイルスによって、大きな変化をしているのは現実も物語も変わりがありません。
ホストが自分の太客女性の家を訪れた際に、マスクをつけたままやってくるのはリアルそのもの。
コロナ禍では、こういった光景が本当にありそうに感じ、物語を見せられているのか、現実を見せられているのか?の判別ができなくなるほどのリアリティーがあります。
アスカノの魅力③「研ぎ澄まされたワードセンス」
『アスカノ』は漫画なので、絵で見せるようそが多いものの、忘れてはいけないのがワードセンス。
「グイします」
「色恋本営鬼枕」
「二度めまして!」
「ワンセット大仏」
など『アスカノ』以外ではお目にかかれないフレーズが目白押し。
ホスト編のひとつ前に章、整形編の主人公であるアヤナは名言、毒言(どくげん)のデパートといっても良い存在。
「上顎前突の口元ブス」「ヒアル(ヒアルロン酸)で補填したらマシになる」など、すらすらと切れ味の良いフレーズが出てきます。
最も話題を集めたといってもいいのが
「猫に小判、馬の耳に念仏、豚にデパコス」
という三連コンボ。
デパコスとは、デパートのコスメの略称であり蔑称。とにかく、あやな毒々しい言葉を紡ぎ続ける女性。
よく女性は「本音と建て前を使い分ける」と言われますが、女性の本音を知りたい人は、『アスカノ』で勉強することをおすすめします。
『アスカノ』は、をのさんが担当編集者の女性と二人三脚で作っており、担当さんも捻りのあるフレーズを一緒に考えているようです。
アスカノの魅力④「ホストクラブならではの業界用語が目白押し」
特殊な職業を描く場合、作者がしっかり下調べや取材をしているのか、あるいは適当に調べて描いているのかは、実は読者からすると丸わかり。
もちろん『アスカノ』は前者に該当。
作中で使われている用語を抜粋しましょう。
- ホスクラ→ホストクラブ
- ラスソン→その日売上が最もよかったホストが最後に歌う曲
- 姫→ホストクラブを訪れる女性のこと
- 本営→客を本当の彼女のように扱い、そう信じ込ませていく営業方法
- 枕→ホストが体を使うこと
- コール→シャンパンコールのこと
- ヘルプ→メインホストの補助目的で入るヘルプのホスト
- 繊維客→太客(たくさんお金を使う客)の反対で、ほとんどお金を落とさない細い客
- ホスラブ→ホストラブというサイトの略称。客の女性が遠慮容赦ない書き込みをすることもある掲示板
などのワードがサラリと出てきます。
ホストクラブに足を運ばなくても、どういう意味で使われているのかが読み進めていると理解できるようになります。
アスカノの魅力⑤「ホストにハマる女性心理の描き方」
ホストクラブに通ったことがない人からすると、なぜ大金を使ってホストクラブに行き続けるのか理解しづらいかも?
『アスカノ』では、
- すでにホストなしでは生きていけない女性
- ホストに興味なしだったのに、ふとしたきっかけでハマる女性
などを描き分けています。
ホストにハマっている女性も「お金だけで繋がれた噓だらけの関係」と頭ではわかっていながらも、大好きなホストを目の前にすると、強く出られません。
彼女の腕は、痛々しいほどのリスカ跡が目立ちます。
またホストには最初、興味がなかった女性、萌(ホスト編の主人公)も、ホストから頻繁に送られてくるメールによって、だんだんと心を動かされます。やがて「気がつけば彼のことを考える時間が増えていた」という状態に。
ホストは恋愛コミュニケーションのプロフェッショナル。そのテクニックは、一般人をはるかに凌駕しています。
ホストとしてデビューした際、先輩からまず教えられるのが
- 客の言葉を最初は肯定する
- 客の変化に気づけるようになる
です。
萌は、ぽっちゃりとしており、どう見てもあか抜けたタイプではありません。少女漫画に登場するとしたら、恐らくモブキャラの域を出られない可能性大。
美女の友人を見ても劣等感を感じながらも、それをコントロールし「私は私が周りにどう見られてるなんかちゃんと自覚してる」と、自身に言い聞かせます。
しかし爽やかな癒し系ホストに、服装をほめられるとまんざらではない様子。男性に正面から愛された経験がない女性ほど、実は愛情に飢えていることを『アスカノ』は看破します。
ホストクラブには、どこでも永久指名制度というものがあり、最初にお店へ行った際に、気に入ったホストがずっと担当になります。人気のホストほど、たくさんの姫を抱えているもの。
せっかく贔屓のホストと同じ時間を過ごせると思ったら、別の客のところにホストが移動しぽつん……というのもよくある話。
ホストクラブへ通う女性で、虚無感や心の穴を抱えていることも珍しくありません。
贔屓のホストがどこかに行った瞬間、天国から地獄へと落とされたような落差があることを『アスカノ』は克明に描いているのです。
アスカノの魅力⑥「リアルすぎるホストたち」
周囲にホストがいるような環境で生活している人は、少数のはず。「リアルなホストを知りたければ『アスカノ』を読むべし!」と言いたくなるほど、作中に出てくるホストには真実味があります。
萌が初めてホストクラブに通うきっかけを作った楓は片親で、親に仕送りをしています。現在、大学に通っており「将来は公務員になりたい」という安定したビジョンを持っているものの、やはりホストならではの人心掌握術に長けています。
彼以外に、徹底して姫に冷たくしておいて、時折、甘い言葉をささやいてコントロール下に置くホストや、前記したように「色恋本営鬼枕の化石ホスト」と大きな声で自己紹介をする、いかにもデリカシーがなさそうなホストも登場。
王道といえるホストもいれば、「コイツは、あまりホストっぽくない……」と思わせておいて、時折ホストとしての牙を見せるキャラもいます。
をのさんは血の通った多種多様なホストを、見事に描き分けています。
アスカノの魅力⑦「実在するお店を舞台に設定」
『アスカノ』が徹底した取材のもとに作り出されているというのは、何度となくとお伝えしてきました。
新宿や歌舞伎町に行ったことがある人なら、漫画の背景を見た際に「あっ…ここってあの場所じゃん!」とテンションが上がるかもしれません。
例えば傷心の萌がひとり涙を流す神社は、新宿にある花園神社。
萌が頻繁に訪れるゲイBARは、新宿二丁目の第6天香ビル4階にある『TRAP』。
そして度々、登場するホストクラブは、NEW GENERATION GROUPの『Cruise』。
『アスカノ』を読んだ後、『Cruise』を訪れると「うわっ、漫画と同じ!!」と感動するかも?
興味を持った人は、ぜひお店を訪れてくださいね。
今後の『アスカノ』はどうなる!?楽しみに待つ人が続出!!
回を重ねるごとに面白さが増幅する『明日、私は誰かのカノジョ』。第5巻は2020年12月18日発売です。
「早く発売日が来ないかな~」と、待ちわびている人がたくさんいるでしょう。
これからの『アスカノ』が、どのように展開していくか目が離せませんね。
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